一生分の仕事
一生分の仕事、という単位があると思っています。
たとえば、田中芳樹氏は『銀河英雄伝説』全十巻で一生分の仕事を成しえている、というように。たとえば、J・P・ホーガン氏はデビュー作『星を継ぐもの』で一生分の仕事をクリアしちゃったよな、というように。
もう二十年近く前のことになる。「では、栗本薫は一生分の仕事を成しているのか?」という仲間内の問いに対して、自分はこう答えた。
「あの人は、死ぬまで書き続けることが使命だから」
そして彼女はそれをまっとうした。
ようやく一生分の仕事が結実したのだ。
『グイン・サーガ』が未完に終わったことは、悲しむべきことではない。
第一巻の後書きにあるじゃないか。
--本来、物語とは「いつまでも終わりなく語りつづける」ことだけを主張してしかるべきものであり、そしてそれこそが近代小説が物語とその読者から無報酬で奪い去ってしまった正当な純朴さの権利である。--
あと何冊分か、原稿のストックがあると聞く。
その最後が『魔都』の最終ページのような終わり方だったら……たぶん泣くだろうな。
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